水島くん、好きな人はいますか。

「ハイハイあれは汗と鼻水でしたね」

「それは別の日の話でしょー!?」

「はははっ! ふ、ふたりとも、なんの言い争いしちょーかっ」


くっくっと肩を揺らす水島くんに顔が赤くなり、瞬を睨む。でもちょっと舌を出されただけで、流されてしまった。


「キャンプかー……」


机に置かれたままだったプリントを拾い上げた水島くんは、簡潔に書かれたスケジュールを眺めているようだった。


「いいな、楽しそう」


……それは、どっちの意味だろう。


一掬の不安はすぐに取り除かれる。


「みくるも行くじゃろ?」


目尻と口の端をゆるませた水島くんの微笑みは、懐かしさを感じるほどおだやかで、凝り固まった心を融かす力を持っていた。


「……うん。あたしも、」


行くよ。瞬を見て告げたみくるちゃんの笑顔はぎこちなくとも、瞬が満足げに笑うくらいには伝わる想いがあった。


「じゃ……、博も強制参加させてくるわ」

「あ、わたしも行く。名前書いてないし」


水島くんとみくるちゃんの名前が書き込まれたプリントを持ち、瞬のあとを追った。


「いらん気を回すんじゃねえよ」


教室を出るなり瞬がもらしたのは、わたしがついてきたことに対しての不満。
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