水島くん、好きな人はいますか。

「だって瞬、ちょっと緊張してるでしょ」

「してねえよ! その目でよく見やがれっ」


なにを? 訊く前に瞬は、


「ひろむっ!」


とE組の出入り口で声を張った。わたしもびっくりしたけれど、呼ばれたハカセはもっと目を丸くさせていた。


そんなことお構いなしの瞬はわたしからプリントを取り上げ、その腕をめいっぱい突き出す。


「キャンプの参加権を勝ち取った俺、さすがじゃね?」


ああ……瞬らしいけど、こんな急に困っちゃうよね。


そう思ったのにすぐ頬がゆるんでしまった。唇を結んだハカセが泣きそうに見えたあと、微笑んでくれたから。


ひと瞬きのあいだに、瞬はハカセの元へ歩み寄っていた。



まばゆいほどの輝きはなくとも、わたしたちの周りに淡くちらつく光が見える。


一度は消えてしまったもの。失くしてしまったもの。


それでも、もう一度……もう一度って。心から願ってきたのは、わたしだけじゃなかった。


ひとりじゃなくて、ふたりなら。ふたりじゃなくて、みんなでなら。きっと何度だって見つけられる。


ひとりでは頑張れないときも、自分を見失ってしまったときも、大丈夫だって思える。


わたしの心は、みんなの中にもあるから。


探しに行こう。道なき道を。篝火を。自分や、夢を。


みんなの心も、わたしの中にあるから。


必要であればいつだって、道しるべになるよ。



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