水島くん、好きな人はいますか。

「あの、でも、できれば持ち帰るだけでも、」

「ピアス……?」

「はい。ごめんなさい」

「なんで謝ってんだお前」


だって水島くん嬉しそうじゃないんだもん。

好みに合わせたつもりなんだけど、間違ったかな……。


「俺、何回も言っちょーけど、他に思いつかん」


じっとピアスを見つめていた水島くんが、瞳を上げた。


「ありがとう。万代も、瞬も」


肩を落としていたわたしは、思わず息を呑んだ。


「……めちゃくちゃ嬉しい」


手の甲で口元を隠し、斜め下に目を逸らす水島くんの頬が、赤くなっていた。


照れ……てる? 水島くんが、赤面?


「ごめん、ちょっと、あんまり不意打ちじゃったから……」

「えと、喜んでもらえたなら、よかったです」

「ん……」


わたしまで恥ずかしくなってどうする……!


「あの、でも、水島くんふたつしかピアスホールないし、気が向いたときにでも付けてもらえればっ。うん!」


箱のふたを閉めた水島くんは頬をゆるませる。


「もう1個開けるけん、問題なか」


……でもそれファーストピアスじゃないよ。という台詞は、嬉しそうな水島くんの前では呑み込む他なかった。


「じゃあ、大事にしてね」

「するに決まっちょーが! 今日から毎日付けるけんっ」


言い切られて、自然と笑みがこぼれる。着々と迫る別れの時間を感じながらも、笑い合えることが幸せだった。


おじさんも待ってるし……そろそろ帰らなきゃね。
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