水島くん、好きな人はいますか。

「俺を誰だと思ってんだ」

「……こんな横暴で傲慢な人間見たことないってくらい強烈なのが瞬じゃろ」

「おいバカにしてんのか。京ごときが調子にのんな」

「さっきからなんかや! 突っかかりに来ちょー!?」

「ああそうだよ! 最後に満足いくまで貶しに来てやったんだよ!」


駐車場でぎゃあぎゃあ騒ぐふたりに、こっそりおじさんが笑っていたのを見てしまった。


とは言え、このまま放置していたら出発が遅れてしまう。


「あのね、」


瞬の隣に並べば、水島くんはわたしに視線を向けた。


「渡したいものがあったんだ。本当は、バスを降りたあとに渡そうと思ってたんだけど」

「てめえが帰るからわざわざ来てやったんだ。郵送しようにも引っ越し先すら知らねえからな」

「瞬、お願いだから黙ってほしい」


ぎらりと睨まれた気配は流し、バックの中から正方形の小さな箱を取り出した。


なんだか婚約指輪を渡す前みたいな光景だ。


「はい」

「……、なんかや、これ」

「開けてみればわかるよ」


パカッ、と。小気味いい音が立った。


「わたしと瞬から、水島くんにプレゼント」

「万代お前、『ただのプレゼントじゃないんだよ! 願いを込めてるんだよ!』って言ってたじゃねえか」

「ちょっ、なんっ……バカッ!」


なんで言っちゃうかなあ! 瞬の腕を叩いてすぐ、水島くんが固まっていることに気付く。


「え、あ、ごめん! 好みじゃなかった!?」


それとも願いを込めた物を渡すなんて、重かった!?
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