水島くん、好きな人はいますか。

また泣いてしまうかも。
会いたいって強く思ってしまうかも。


実はもう、思っているけれど。

わたしが水島くんの好きな人に入っているなら、それでいい。覚えていてくれるなら、それでいいの。


心が沈んでいくさまや、輝く世界への戸惑いや、与えられた充足感。色を失った景色とか、冷えたからだを包み込むぬくもりとか、きれぎれになった絆が結び直される瞬間を。水島くんにも覚えていてほしいと思った。


離ればなれになってしまっても、一緒に過ごした日々が、彼を支える力になってほしかった。


わたしたちは、なにもかも順調にいくことばかりじゃなくて。それでも今日ここまで、泣いてばかりじゃなかったように。

悲しくて、つらくて、寂しくて。それら全てをひっくるめても、


『あのときは最高に楽しかった』


そう笑って話せる未来に、彼も一緒にいてほしかった。



恋人になれなくたっていい。
恋しくて涙を流す時間が来たって、いいの。


あんなことがあったね。こんなことが、あったよね。


気まずさも後ろめたさもなく、打ち解ける時間だって必要ないくらい。思い出の箱をいちばんに開けてくれる人は、水島くんがいい。


水島くんが誰を想っていても、また笑い合えるふたりでいられたら、とても嬉しい。そんな未来が来てほしい。


だから……どうか。


彼の決意と覚悟が、綾ちゃんの救いになりますように。


無茶ばかりする彼が泣いていたら、そっと寄り添う友達がいますように。


彼の優しさがいつか、自分にも向けられますように。


それまでどうか彼の心が、折れませんように。



覚えていて、水島くん。


わたしはずっとここで、大好きなあなたの幸せを願ってる。

< 378 / 391 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop