水島くん、好きな人はいますか。




なにかの電子音が頭の中に響く。


電話? 目覚し時計? それとも――…。


寝坊!? 勢いよく起き上がり、めまいのせいで再びベッドに倒れ込む。昨晩飲んでおいた市販薬では遅かったのか、熱っぽさや倦怠も感じた。


「うぅー……」


しばらく鈍痛のする頭を押さえながら呻き、先ほどの電子音はインターホンだと思い出す。


カーテンの向こうから降り注ぐ光は朝のそれだった。


この時間にインターホンを押すのは瞬しかいない。ということは、登校する時間。


遅刻……とか思ってる場合じゃないくらいには具合悪いのに、習慣って怖いな。


ふと目に入ったテーブルの上に、見覚えのあるメモ帳が置いてある。覗いたそこには【学校には連絡しといたから病院に行きな。】と書かれていた。


よかった……。自分で連絡すると後々学校から仕事中のお母さんへ確認を入れられるんだよね。


それだけは避けたかったから、昨日のうちに早退したとメモを残したのは正解だった。


その後の記憶がおぼろげだけど……早退してシャワーを浴びたあと薬を飲んで、そのままずっと寝てた?


なにも食べてない……。
病院に行くついでに買い物をしてきたほうがいいかも。


なるべく頭に響かないようにゆっくり起こした体を、自室のバルコニーへ持っていく。


バルコニーと呼べるほど立派なものではなく、3畳にも満たない狭いそこへ出れば、マンションの裏口から登校していく瞬の姿が見えた。
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