水島くん、好きな人はいますか。
「バカが。俺の自由ってなんだよ。縛り付けてんのは俺のほうだろーが。身に覚えがねえとか言うなよ? 俺が今までどれだけ命令して、言うこと聞かせて、約束させたかわかんだろ」
「……でも、それは……罪悪感からで、」
「ああそうだな。罪悪感だよ。申し訳ねえと思ってるよ。俺がこんなんだから、お前は受けなくてもいい恥辱に耐えて、悪意すら向けられるんだからな」
「ち、がうよ……。わたしが疎まれるのは、わたしの問題で、瞬のせいじゃない」
「いいから聞けよ。俺がああしろ、こうしろって口うるさいのは、守るためだ。余計ないざこざを起こしたくねえのは、お前がへこんで、ろくなことを言い出しかねないからだよ。今みたいにな」
矢継ぎ早にしゃべる瞬の言葉を追うのに精いっぱいで、頭がついていかない。
「お前は嫌々だろうと望まれたら大概その通りにするだろ。ふざけんなよ、まじで。周りの不満ばっか聞き入れやがって、こっちは気が気じゃねえんだよ。まず最優先に俺の不満を解消しやがれっての」
瞬は苛立ちを取っ払うみたいに、頭を乱暴に掻く。
「俺はずっとお前の味方だって言ってんだろーがっ」
「……」
「何度もそう言ったよな? 罪悪感がないとは言わねえけどな、そんなもんいくらでも見過ごせんだろ。気付けよ。この俺が、なにを好き好んでどうでもいいって思う奴と11年もつるんでなきゃいけねえんだよ」
返答に詰まるわたしは、ただただ瞬が向けてくる真摯な瞳に平静を失っていた。