ただ、飛べてしまっただけ。
そして、少しの沈黙が流れる。
その沈黙がどれだけ重たく、苦しいものか。
その場に居ない俺だって変な汗をかいている。
そんな中、
先に口を開いたのは、
圭太だった。
「分かってても、りっちゃんが好きなんだよ…」
圭太の言葉に俺は何かで胸を刺されたような気持ちになった。
そんな時、食堂のドアが開いた。
中から出て来たのは
圭太だった。
圭太は俺を見ると
一瞬、驚いた顔をしたが
すぐに俺から目を離し
悔しそうな顔をした。
「盗み聞きかよ」
「わりぃ…」
俺も圭太の目を見ずに小さく言った。
「俺はちゃんと伝えたんだ。それだけでいいんだ。だから、龍兄がそんな顔すんな」
どんなことを思い、
どんなことを考えながら
そんなことを言ったんだろう。
圭太は強いヤツだ。
だから、人前で泣いたりしないけど、
「……こういう時くらい、泣いたっていいと思うぞ」
すれ違いざまに言った俺の言葉はちゃんと聞こえていたかはわからないが、
圭太が部屋に入る前に鼻を啜る音がして、やっぱアイツは強いな、なんて思った。