いぢわる王子様
私は秋らしく茶色っぽいセーターを着ていくか、もう少し明るい色のセーターを着ていくかで悩んでいた。


「碧、入るよ」


コンコンとノックの後、私の返事も聞かずにお母さんがドアを開ける。


今日は仕事が休みなのだ。


「あら、今日は出かけるの?」


「うん。ちょっとね」


そう言いながら、私は鏡の前で再びうなり声をあげる。


そんな私に、「もしかして、デート?」と、頬を緩ませて聞いてくる。


『デート』いう単語に一瞬心臓が飛び上がり、それとほぼ同時にカッと顔が赤くなる。


「あら、図星なの? 相手は誰?」

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