モテ男と勤勉オンナの【秘】ラブ・ゲーム
「お姉ちゃんは知らないかもしれないけど…葵君って、すんごい有名なんだよ。私たちの間じゃあねえ…」


「…るさい」


「え?」


桜が歯ブラシを持ったまま、振り返った


「うるさいって言ってるの! あたし、別に北城君とは何でもないし! 付き合ってない。好きじゃない! あたしは北城君にとって、仲間内の賭け事の対象でしかないの。だから付き合っている振りをしているだけ。桜の言う『奇怪な趣味』のせいで脅されて、北城君が賭けに勝つように演技しているの。それだけよ」


「あ…うん」


桜がぽかんと口をあけたまま、あたしの勢いに負けて頷いた


「もう…北城君のことで勝手に解釈して盛り上がらないで」


あたしは桜を洗面所の前から退けると、歯ブラシに手を伸ばした


『奇怪な趣味』で悪かったわね


どうせ、北城君だって…同じように思ってるわ


椎名君と同じようにあたしを『ガリ勉オタク』って思ってるに違いない


誰もあたしを理解しようって思ってくれる人なんていないのよ


それなら一人で生きていったほうが気が楽ってもんよ


まわりの目を気にしなくていいんだから

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