地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
これは、抱きしめてくれるっていう合図。

昔から変わらないこと。


「やった」


小さく呟いて、ベッドから出る。

側に置いていた黒ぶちのメガネをかけると、ソファーへ駆け寄った。


陸の広げられた腕の中に、飛び込むようにして抱きつく。


「ギューして?」

「はいはい……」


顔を陸の胸にうずめると、温かい腕が背中にまわってきた。


ふー……落ち着く……。


ふわりと甘い香りが鼻をかすめる。

陸の匂いだ。

スリスリとくっついた。


「杏……髪ボサボサ」

「うー……だって寝てたし……」


ベッドで寝ていたから、ボサボサになってるみたい。

でも、陸が梳いてくれる。

優しく、撫でるように指を通された。


こうされてると、眠たくなってくる。

いや、もう眠たくてたまらない。

陸の温もりがあったら、余計に。



ウトウトし始めた頃───……。



「杏? お前バイト決まったのか?」

「ふん?」


突然、問いかけられた。






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