地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
ケガを治す前に、コソコソと話していたことを。

それは……アイドルのふた組とも、陸の会社の仕事を抱えてるって。

あたしの注意不足で、アイドルはケガしたのなら……その責任を取らなきゃ。


治さずに、もし、陸の仕事に支障が出たらイヤだもん。


一生懸命頑張っているのに、その邪魔はしないようにしたいの。

陸の質問に答えずにいると。


「……俺のためか?」


ポツリとヤツが呟くように問いかける。


「えっ……!?」


――パッ


陸のヤツの胸から顔を上げた。


「俺の仕事のためか?」


同じ目線の高さになったヤツに、ジッと見つめられる。


「え、えっと……」


見破られてる……よね?

視線を外して、キョロキョロした。


「ムチャした理由は?」


陸のオーラが、『絶対に言わせてやる』という感じだ。

どうしようか。


「あ、あの……だって……」

「ん?」


ニッコリと微笑んだ陸が顔を傾げているけど、その目は笑っていない。

言わなければ、絶対にヤバいことになりそうです。


覚悟を決めて、俯いたまま口を開いた。


「ケガしたアイドルたちに、滝本の仕事が入ってるって聞いて……このままじゃ、その仕事に支障が出るし……陸にも迷惑がかかるから……」


途切れ途切れに答えた後、陸の表情を盗み見る。


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