地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー

翌日のお昼過ぎ……。


「お世話になりました!」


キャリーバックを持って、玄関でそう挨拶をする杏樹。


駅までは、翠たちが送って行くらしい。

私も見送りに行きたいけれど、翠が行くなら……私は残って、この場を守らなければいけない。


もうちょっとゆっくりして行けばいいのに、この孫は。


「もう……帰らなきゃ。大学もあるし」


そう言って、荷物をまとめた。



「杏樹ちゃん、今後、彼も連れて来なさいな」

「え……!?」


家族の前で言った私の一言に、驚く顔をする翠。


「お父さん聞いて! 杏樹ちゃんの彼氏、ものすごくイケメンだから!!」


続いて早和の告げ口に、杏樹の顔色が変わった。


「杏樹ちゃん本当かい!? 兄貴は知ってるのか?」


どうやら、まったく聞かされていなかったらしい翠。


「はい、まぁ……じいちゃんも知ってます」


ポリポリと恥ずかしそうに頬をかく孫は、とてもかわいらしい。



『こんな美人を射止めた男が見てみたい!』

翠の表情から、そんな思いが伝わってくる。



「……ことが落ち着いたら、連れて来るから」


私に向かって、笑いながら言ってくれる杏樹。


「約束だよ? 絶対だからね!!」


杏樹の彼氏さんに、どうしても会いたいらしい早和は、杏樹と指切りをする。


「うん、絶対にまた来るから」



そう言って、杏樹は。


京都版の神崎家を発って行った。

< 465 / 622 >

この作品をシェア

pagetop