地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
すると……。


「気にしてないよ。今の陸が好きだからさ」


ニッコリと微笑みながら言われた。



あぁ……俺、なんにもわかってなかったのかもしれない。

杏が、俺の過去を聞いて……離れていくことを前提で考えていた。

コイツが、そんな女じゃないと信じ切れてなかったよな。



「杏……ごめん」


さっきとは、ちがう意味で謝る。


「どーしたの?」


ニコニコと笑う杏は、俺の頬を優しく撫でた。



優しく微笑む彼女を、もう一度抱き寄せる。


「ありがとな……」


肩口に顔をうずめて、そう伝えた。


もう、怖がらなくていい。

コイツ……杏は、俺の過去のことも、理解してくれるから。


知られる前は、怯えていたが……話してみれば、全然あっさりだった。

ストーカー、何すんだよって思ったけど……結果的によかったな。



そんな時。


「陸……苦しいっ……」

「へ?」


杏の声が俺の意識を引き戻す。


どうやら、うれしさで力の加減を考えずに抱きしめていたようだ。



「あ、わりぃ……」


すぐに力を緩めるが、杏がとんでもないことを言い出した。


「というかね、陸の過去話って、もっとすごいものかと思ってた」

「は? なんだと思ってんだよ」


何を想像していたんだか。

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