隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~
 まだ上映中だから、人の居ないエントランス。置かれてある長椅子とソファに居る、2人。ミナトさんの優しさが、滲みてきていた。

「ご、ごめんなさい」

「ほらぁ、またあやまる」

 頭をポンポンと撫でられた。ぼんやりする頭。吐いたし涙出てきてメイクなんか崩れてしまった。その顔でミナトさんを見てしまって、汚いなって思われたかもしれない。
 目が合うと、笑ってくれる。頭に置かれた手が温かくて、胸が苦しいよ。
 吐き気もう直ってるけど、それとは別に苦しい。

 あたしはこのまま、この手の温かさと一緒に、行っても良いんだろうか。許されるんだろうか。

 答えなんか、出なかった。

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