三角形(仮)



でもそんな私の偏見をなくしてくれた人に巡り合えた。


名を宮川勝という。





彼と出会ったのは、今から1年と少し前の事だった。


私は大学3年で、就職活動がそろそろ本格化してきた事で焦り始めた時期だった。





その日は秋だというのに、朝からとても寒かった。
雨が振りそうな曇天の中、友人の秋穂とリクルートスーツに身を包み、企業の合同説明会に向かっていた。
黒に染め戻した髪、今にも雨が降りそうな天気、今後の就活を考えて、私はとても憂鬱な気分だった。

そんな時、ふと駅の壁に寄り掛かる男を見た。
ただ向かう道の先に男がいて、目に入っただけだ。


ブルーが基調のネルシャツ、インナーに外国人の顔がプリントされた白いTシャツに、緩めのデニムを穿いていた。
明るい茶色の髪を立たせ、今時のモテる男を絵に描いた様な男だった。

男は携帯片手に不機嫌な様子だったが、その風貌から周りにいた多くの女は男の事が気になっている様だった。


私は純粋に男がカッコイイと思った。
しかし過去のトラウマから、カッコイイと思うと同時に、どうせこの人も顔だけなんだろうと感じた。


そして私は男の事など忘れ、憂鬱な気分のまま秋穂と電車に乗った。



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