水色のエプロン

フレンド。

「お店に着いたら裏に廻って、そこにフレデリックがいるはずだから、鍵のありかはフレデリックにきいてね。」
 店長はそう無責任に言って、にこにこしているだけだったけど、犬に鍵のありかを聞けだなんて、店長もどうかしている。
「店長のバカー!」
 私は坂道を下りながら大声でそう叫んだ。
 見上げると空は青く澄んでいた。もうすぐ本格的な夏がこの町にもやってくる。さわやかな風が私の頬をなでた。こんなプレッシャーがなかったらこの町が生まれたての世界に感じただろう。

 館山の駅を背にし、私は店長から手渡された地図を確認した。
「ここを左に曲がるのね。」
 しばらく進み、次の角を右に曲がる。そしてまた暫く進む。するとその道の右手に小さなトリミングサロンがあった。
「こんな所にこんなお店があったなんて、ぜんぜん知らなかった。」
 私は店の脇に自転車を止めた。お店の看板は可愛いプードルのシルエットが絵がかれていた。木造のデッキはレトロでお洒落なようで、だけどちょっとおんボロで、そのどちらともいえない真ん中と言った感じを私は少し気に入った。
「お店に着いたら裏に廻って。」
 私は店長に言われた通りに店の裏に廻ることにした。表玄関の右脇に店の裏へ回れる小さな門が付いていた。私はその扉をゆっくりと明け静に店の脇を抜けていった。
 店の裏庭は意外と広くって以外にも手入れが行き届いていた。芝生の緑がとても綺麗だった。二、三歩中に入ると大きな赤い屋根の犬小屋があった。しかし中に犬はいない。
「フレデリック?何処にいるの?」
 私はためらいながら、小さな声で看板犬とやらの名前を呼んだ。
「ううん、ぐるぐる、、。」
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