水色のエプロン
すぐ足元にあった木の陰から、えたいの知れない声が聞こえた、私はその声に驚きその場に尻餅を付いてしまった。
「痛たた・・・。」
 すると、その木の陰から大きな真白のサモエドが顔を出した。
「あなたがフレデリック?自分の小屋じゃなくってその木の影で涼んでいたのね。」
 犬は私と目を合わせることもなく大きなあくびをした。
「それでも看板犬!?」
 私がそういうとフレデリックはフンと鼻を鳴らし、また寝ようと伏せてしまった。
「あ、まって寝ないで、店長にあなたにお店の鍵のありかを聞いてって言われてるの、ねぇ鍵何処にあるの?」
 私がそう聞いたのも虚しく、フレデリックはそっぽを向いて眠り込んでしまった。
「ちょ、ちょっと、、、。十時にはお店を空けなきゃいけないのに、、。」
 あぁ、やっぱり店長の言うことなんて聞かなければよかった。今頃後悔したってもう遅い。
「はぁ、、。」
 私は、今日二回目のため息を付いた。
 そもそも、犬が人間の言葉を理解できるはずがない。
 私は芝生に座り込んだ、まだ太陽はそれほど高くはないはずなのに、芝生を照らす日差しが暑く感じた。
 トリマーなんていつも毛だらけになって、時には犬に噛み付かれたり、怪我をしたり。おしゃれだって出来ないし、水仕事で手だっていつも荒れていて・・・。
 店に来るお客さんにもよく言われる。
「好きじゃなきゃ出来ない仕事よね。」って私はそのたびにそうかも知れませんねって他人事のように愛想笑いをしていたけど、なんだかそんなの、どうでもよくなってしまいそうだった。

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