探偵は、言った。
探偵は、言った。
「それではみなさん、また今度。
赤い夢の中でお会いしましょう」
探偵は、消えた。
綺麗なウィンクをひとつ、残して。
焦げ茶色の革靴も。
チョコレート色の扉も。
全部、全部消してしまって。
探偵は、消えた。
けれども、少女は静かに笑った。
えぇ、えぇぜひともまた。
赤い夢でお会いしましょう。
あなたに会いに。
私はまた、あの赤の中に参りましょう。
少女は、笑った。
ワイングラスを片手に。
その顔には、先程の絶望などひとつも残さず。笑った。