妖魔05~正道~
秋野は傍にあったガードレールの上に腰を下ろす。

「何故、未来がないか。それは解るかしら?」

「知った事か」

「会話をしましょう」

いたって、変わらない口調だ。

「ふざけるな、お前のやった事に会話が伴っていたか?」

「会話をしようとしたわ。でも、彼等は耳を貸さなかった」

「だから、人間と手を組み、妖魔を貶めたのか」

「貶めたという言い方には語弊があるわ。私や私に協力してくれる人達の未来を作るために、動いただけよ」

「未来だと?」

「次世代を担うための進化とも言えるわね」

「妖魔は妖魔だけで、世界を作ればいい」

「それでは結果的に手詰まりになる事が見えている。人間は道具に頼らなければ生きてはいけない。妖魔は能力に頼らなければ生きていけない。それでは、改革派が望んだ再生は来ない。一生同じ事の繰り返し。では、どうすればいいか。人間の道具に頼ろうとする気持ちと、妖魔の能力に頼ろうとする気持ちをあわせればいい。お互いに少しずつを献上するだけではなく、そうする事によって文明は突き進む」

「大層な弁舌だな」

「しかし、人と妖魔の垣根を越えるためには一筋縄ではいかない。共に手を取り合うという真の意味はただ認め合うだけではならない。妖魔には人間の子供を、人間には妖魔の子供を身に宿し、共存という覚悟を植え付け、意識を改革していくしかない。そこで始めて、第一段階が終了するの」

「それで、民族同化を図ったというわけか」

「葉桜」

闇の奥に立っているのは、コートを着た葉桜丞だった。

「何をしに来た?」

「理由を聞きに来ただけだ」

表情は、暗く、哀しみを称えているようだ。

「お久しぶりね、葉桜君」

「湊さん、何で、皆が苦しい思いをしなくちゃならなかった?」

「本当の改革には、奇麗事だけでは済まされないからよ」

「あんなに大勢の人や妖魔を説得したというのに、何故、最後まで貫き通さなかった?」
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