妖魔05~正道~
だが、突如として妖魔が現れる。

ちなみに、刃ではない。

「秋野!殺す!」

降りかかる火の粉。

「落ち着け!」

俺が動く前に、妖魔は何かに押されるように地を這い蹲る。

「これが現状だ」

能力を使ったのは、笹原道元だ。

重力か。

「これでも、どうにか出来るといえるのか?」

「急激な変化は保守派にとっては受け入れがたい物だとは思う。でも、頼む、あんた達の意識を、世界を変えてくれ」

俺は頭を下げる。

「解った。君は、私達を救った恩人とも言える。出来る限りの努力はしよう。だが、彼女が譲歩しない限りは、妖魔達を説得しようがない」

道元は湊を見る。

「湊さん、妖魔の里に人間を受け入れる事や、人間の世界に妖魔を受け入れる事だけでも、変わると思うんだ。ただ重石になるような法律に嫌々従っていれば、不満は爆発する。今でさえ限界なんだ。だから、それは待ってくれないか」

俺と湊さんの目は交差したまま、一分程度が過ぎようとする。

「まあ、いいわ。笹原君、後日、また話し合いを開きましょう」

謎の男と共に、湊さんは闇の中へと消えていった。

解ってくれればいいけどな。

まだ、終わったわけではない。

改革派である刃は、確実に湊さんを狙うだろう。

刃の意志は強く、堅い。

「燕、刃の事を変えられるのはお前だけしかいない」

「当たり前だ。何てったって、私は刃のフィアンセだからな」
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