俺様彼氏に気をつけて!?

涙とぬくもり

翌朝、私はいつも通りの道を歩いていた。

いつも通りの時間に起きて

いつも通りに朝食を食べて

いつも通り家を出た。

昨日までと何ら変わらない。

そうだよ。

千晶を諦めたからって何も変わらないんだ。

ただ一つ、心の雨が降り出したことを除いて。

全部今まで通りじゃない。

これで全力で佳奈を応援できるんだし、

もう水樹に心配かけることもない。

良いことだらけよ。

なんて考えてみてもやっぱり辛い。

心にぽっかり穴が開いたような感覚は消えてくれない。

それほど私は千晶が好きだった。

そう、好き“だった”。

今はもう諦めたんだから。

なにもかも諦めて、投げ出して。

楽に生きていくことを選んだ。

中にはそんな簡単に諦められるなら、所詮その程度の想いだったんだって思う人もいると思う。

でもね、そうじゃないの。

好きだから諦めるの。

千晶が私ともう関わりたくないと言うのなら、せめてそれに応えてあげたいと思うじゃない?

最後くらいは潔い女って思われたいじゃない?

自分のこと、なるべく綺麗なまま覚えていてほしいから。

そんなことを考えていたら、いつの間にか学校に着いていた。

「おはよー」

「おはよ、ひな」

「おはよ。って、どうしたの?」

教室に入ると水樹が驚いた顔をした。

「なにが?」

「なにがって、酷い顔よ?」

あぁ、そゆことね。

確かに昨日の夜はほとんど寝てないからクマも出来てるし、お化粧だって全然やってない。
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