神風

「飛鳥が喜んでるでしょ?飛鳥だって今まで何回も全国に行ってる。」


あたしだって何回全国に行ったってあの時の喜びはいつでも味わえる。


それが当たり前だとは思わない。


「それを当たり前だと思ってるんじゃないの?」


きっと部員も。


中学からやってきたんでしょ?


みんな顔見知り。


「新人戦、がんばろうよ。あたしも足治すから。」


まだチャンスはある。


吹奏楽…


このメンバー、この場で演奏するのは今日が最後かもしれないといつも思ってる。


陸上だって同じ。


このコース、このメンツで走るのは2度とないかもしれない。


だからいつだって全力で走り抜けたいんだ。


「そうだな。」


無表情だった彼の顔がフッと緩んだ。
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