神風

時刻はもう9時を過ぎようとしていた。


「由那は強いな…」


楽器をしまいながら彼が言った。


「去年の昨日はなんとなく落ち込んでた気がしてたんだ。昨日は部活長引いちゃってこれなかったけど。」


心配しててくれたんだ。


不器用な彼の精一杯の優しさが嬉しかった。


「もう去年の話でしょ。いつまでもクヨクヨしてられないし。」


本当はまだ立ち直ってなんかないよ。


きっと元樹より弱い。
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