かけがえのないもの
「お兄ちゃん…」

瑠奈はさらに隼人に体を密着させる。

隼人はどぎまぎした。

小さい頃から変わらない甘え方だったが、その眼差しからは強い意志が感じられた。

「もっともっと頼もしくなって、帰ってきてね。」

瑠奈は隼人の手を強く握った。

「私の、自慢のお兄ちゃんへの、一旦、最後のわがまま。
もっと私がお兄ちゃんのこと、自慢できるようなお兄ちゃんになって。」

「…うん。約束する。瑠奈のこと、しっかり守れるようになって、帰ってくる。だから…」

隼人は瑠奈の手を握り返し、まっすぐに目を見つめた。

「それまで、そのままの瑠奈で、待っててほしい。」
「うん!…私、ずっと待ってるから!」

瑠奈の笑顔は、今までで一番輝いていた。
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