秘密のkiss
急ぎ足で家を出ると、柊が腕を組みながら玄関の壁にもたれて待っていた。
もうこれはいつものこと。
「おはよう」
と、ぎごちなく私は言う。
柊は、私に気づくと、おはようと微笑んで答えた。相変わらず整った顔。
「待った?」
「いや」
そう答えると、柊は自分のスポーツバックと共に私の鞄をすっと抱え歩いて行く。
「………。」
あの事故を境に、私の足は、走れなくなってしまった。
でも、普段の生活に支障をきたすほどではなく、鞄を持つぐらいなんともないのに。
何度も断っているけど、柊は止めようとしないから、もう何も言えなくなってしまった。