ライフ オア デスティニー
「それだって現在進行中だ。くらえっ」
エラルドはくねっと身を翻す。おかげで戦意が削がれたザクロ。このあたりが下級悪魔たるゆえんなのか……ちょっぴり涙目になっているのは、やはりエリートコースを外された悔しさからだろう。
「俺だって、俺だってなあ! 天から送り込まれる勇者の首を持ってきゃあよ? それなりにだなぁ……」
「今の台詞じゃ全然説得力ナッシングよ。ま、その間にこちらの勇者もずいぶん成長したし。天界の特AAランク、全制覇してるよん」
「そんなの、何が変わったっていうんだ」
「あいつだってメートル法でいったら152センチ。でっかくはないな。俺は時々思うんだ。元気にはね回るあいつの世界は無限大で、俺たちは広い世界は実感しにくいが……
あいつと一緒にいると気づくんだ。夕日の暖かさ、ひんやりした朝焼け、うっすら空にとけ込んでゆく一番星なんかの目撃者になるってことが、なんつーか気持ちよくて。その時々で姿を変えてしまう儚いものこそ尊く、それぞれに美しいって」
「カッ、ビョーキか。おまえのいうことは悪魔に魂を売ったかつての芸術家と同じだ。会えばいい、同じだってことがわかって、じーんとくるだろうぜ。いや、ぞーっとするかもな。ひゃはは!」