ライフ オア デスティニー


 エヴは息をのんだ。


「そこのオッサン、聞こえねーフリしてんな」



 声は近付く。ほかならぬ、彼の、声が。



「オッサン!」



 一つ処でなく、周囲にわんわんと鳴る鐘のように声は響いた。少なくともこの闇は彼の意志を阻害するものではないようだ。逆に彼女には一切の感覚を麻痺させるかのように包み込んで丸められて大きな膜にくるまれでもしているように感じさせる。

 ゴルドンは安全を確かめつつエヴの方を見た。光のコクーンがあちこち散らばってしまったため、辺りが、とまではゆかなくとも、立ち位置としゃべっている事くらいはわかる。

「彼」はそこいら辺を蹴飛ばしつつやってくる。



「ゴルドン、いくら勇者の墜ちた姿と言えど、あれは何か因縁付けてきているようにしか見えないんだけど。逃げた方が良くないかしら」





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