傷跡
『そんなこと…あるわけないじゃん。そんなことで離れるわけないでしょ?あたしはホストの光輝を好きになったんじゃないんだよ?お金がある光輝とかナンバーワンの光輝を好きになったんじゃないんだから』
あたしがそう言うと、光輝は少し黙りこんでしまった。
そして……
『どうしても…母親のことがトラウマになって。女っつーか…杏奈のことも心底信じることができなかったんだ』
強く手を繋いだまま…
光輝はそう、呟いていた。
『これからもそれは変わらないの?あたしのこと…信じられない?』
『信じられない……そう思ってた。でも…離れて思ったんだ。お前なら…信じられるかもしれないって。だから信じたくて…今日全部話しに来た』
光輝はあたしを信じようと。
信じたいと思って…
消えない過去の記憶を、あたしに全部話しに来てくれたんだね。