傷跡


『俺…もうめちゃくちゃになってたんだ。お前がいなくなっておかしくなって…他の女…連れこんだりして。俺…何やってんだって自分でも分かってたよ。でもどうしようもなかったんだ…。本当…ごめん』




そう言って、光輝は申し訳なさそうにあたしに頭を下げた。





『ごめんってさ…許せるわけないじゃん。嘘ついてくれたほうが良かった。あんな現場見せられても…光輝には違うって…言ってほしかった』


『本当ゴメン…』


『許さないよ。光輝は自分が一番嫌いな裏切りを杏奈にしたんだよ?信じた人に裏切られた気持ち…光輝なら分かるでしょう?ほんとにキライに…大っキライになりたかったよ…』」


『えっ…?』


『でもなれなかった。光輝のこと、キライになんてなれなかった』




光輝はそう答えたあたしを、強く強く抱きしめてきた。




『ごめん…ごめんな…』




そして、
何度も何度も…

光輝はずっとあたしに謝り続けていた。




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