傷跡
『あ、俺もビール』
そして、ホストの彼も自分の飲み物をウェイターに頼んでいた。
『あ、大丈夫だよ。俺が飲んでも金とか関係ないから。っつーかここ、俺の店なんだよね』
『俺のって…えっ?』
そう驚いていたあたしに、彼はそっと名刺を差し出してきて。
あたしはジッとその名刺を見つめた。
オーナー、春日陽翔。
だだのチャラホストかと思っていたその男は、このホストクラブのオーナーだった。
『ま、とりあえずカンパイすっか』
『あぁ……』
そう言われてグラスを持ったあたしは、とりあえずビールをゴクッと喉へと流し込んだ。
『ほんとにオーナーなの?』
『そーだけど何で?みえない?』
『いや……若いからさ…自分のお店とかすごいなぁと思って』
『まぁ…ここに来るまでいろいろあったけどね。っつーか杏奈の働いてる店はどこなの?キャバクラ?』
『うん、キャバクラ。SEASONって知ってる?』
『えっ?SEASON?マジかよ…』
ホスト陽翔は、あたしがお店の名前を言った途端、一瞬で顔が引き攣っていくように見えた。
『なぁ、その店にルイってやつまだ働いてる?』
ル…イ?
それは…あたしが今一番聞きたくない名前で。
またルイ?
ルイがあたしにまとわりついてるんじゃないかって思うくらいなんだか気味悪く感じた。