傷跡

愛の巣



そして――――



一年記念を控えた日曜日、やっと待ちに待った物件探しの日が訪れた。




その日は光輝は仕事が終わると一睡もしないまま物件探しのために朝までそのまま起きていた。




そして、夜の仕事をしている人を専門とした不動産屋の人と朝から喫茶店で待ち合わせをしたんだ。




『何件かリストアップしてるんで絞っていきましょうか』





でも、あたしはなんだか不思議に思った。



普通は不動産屋ってお店に行って色々調べるもんだと思ってたから。


こんなこともできるんだ…って少し感心してしまった。




喫茶店で物件資料を広げ、十件近くあるマンションから設備や場所、環境を考えて三件まで絞った。


そしてお昼前には物件めぐり。


まるで新婚さんにでもなったかのようにあたし達ははしゃいでた。




一件、二件、三件…



と見て回ったけど、あたしはその中でも特に二件目が良かった。


光輝はどうなんだろうなぁ?



そう思ってるとニコニコした光輝があたしに言ったんだ。




『お前の気に入ったとこでいいよ。杏奈が選んでよ』


『えー?光輝はどこが良かったの?杏奈も言うから教えてよ。ぶっちゃけ全部それぞれ良かったんだけどさ…』


『うーん俺は二番目に見たとこが良かったかなぁ。キッチンも広かったしベランダも日当たり良かったし』


『ほんとに?!杏奈も二件目が良かったんだぁ!じゃあ決まりだね』


『マジでほんとに二件目か?俺に合わせてない?』


『合わせてないよー、ほんとだもん』


『そっか。じゃああそこに決めようか』




そして…

その日のうちに仮契約をすませたんだ。




ずっと待ち続けた夢が叶っていく。



私は飛び上がりそうになるぐらい嬉しかった。


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