傷跡
『この名刺なに?』
『あぁ、仲いい他店のホストの代表さんと付き合いで飲みに行っただけ。あと営業がてらな』
光輝は、不安なあたしの心境になんて全然気付きもしないで…
平然とあたしにそう言った。
前ならかなり焦って…あたふたしながら一生懸命言い訳も考えたりしてくれてたのに。
あたしばっかりが一人で必死になってた。
ただでさえ光輝の周りには女の子がいっぱいなのに飲みにまで行ってるなんて…。
『光輝おかしくない?なんで平気なの?こんな名刺見てあたしが嫌な気になるの分からない?こんなもの持って帰ってこないでよ!』
あたしは…
そう言って、また光輝に強く当たってしまっていた。
最近は言葉を交わせばこんな喧嘩ばかり。
だから会話なんて全然楽しくもなかった。
『あーうるさいなぁもう。仕方ないだろ?仕事なんだから。いいじゃん、こうやってお前と付き合って一緒に住んでるんだし。何が不満なんだよ?』
光輝はだるそうに私にそう言うとベッドに入り、背中を向けて寝てしまった。
なんなの…?
一緒に住んでるんだから文句言うなみたいなこと言って。
あたしは光輝の考えてることが、だんだん分からくなっていった。