帰って来た HERO【完】
自分と言うオッサンの入った着ぐるみなんぞに興味はない。
これはまゆたんがお揃いで付けたいと言うので付き合っているだけです。
ノゾムくんは濡れた足音を響かせながら背後の棚に駆けて行って背伸びをし、自分の青いバスタオルを広げて見せてくれた。
去年のファンクラブ会員内の限定抽選品ウサゴン柄であった。
それけっこうプレミアものだぜ大事にしろよ、と俺は思った。
「ウサゴンにバク転習いたいの」
「へ、へぇ・・」
「・・・・・・・」
・・・な?
俺に話しかけたって、会話つづかねーし。
ごめんな。
俺が心優しい素敵なお兄ちゃんじゃなくて。
「ノゾムくん!?何処!?ここにいる!?」
シャンプーしかけで眼の開けられないパパさんが脱衣所に駆け込んできた。
あんたほんと大変だな。
俺は再び同情した。