世界を敵にまわしても


……いつも通りだな。


何も変わったとこはない。相変わらず晴やクラスメイトと他愛ない話をしてるし、その表情も笑顔。


昨日の、消え入りそうなほど脆く見える先生ではなかった。


昨日の先生の方が幻みたい。でも夢じゃないんだよな……。


「じゃあ、今日はどの部活も休みだから。家で休むなり友達と遊ぶなり、羽根伸ばして。お疲れ様」


先生の言葉でホームルームが終わり、教室は解放感に包まれる。それは他のクラスも同じなのか、廊下もザワザワとし始めた。


あたしは先生が教室を出ていくのを見ながら、メールを送ろうか悩む。


試験1週間前から職員室や準備室は出入り禁止になっていたから、放課後は会えてなかったんだけど。今日も先生は忙しいのかな。


……忙しいよね、多分。


「ウチ買い物したい」


……椿も遊ぶ気満々だし。


あたしは取り出し掛けた携帯をポケットに押し込んで、軽く溜め息をついた。


「分かったよ。何買うの?」

「んー。見てから決める」

「あたしお腹空いた」

「じゃ、先にどっかで食ってくべ」


椿が席を立ち、あたしも鞄を肩に掛けて腰を上げる。


どうしても今日会いたいわけじゃないし、先生とは明日以降ゆっくり会えた方がいい。


多分、先生も忙しいだろうから。
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