世界を敵にまわしても
ザワザワしていたコンサートホールが、開演の知らせによって徐々に静かになっていく。
腕時計を見ると、ちょうど午後5時。
客席の照明が暗くなると、すでに譜面台や椅子が並ぶステージの左側から、奏者たちが各々の楽器を持って出てくる。
……いきなり始まるものなのかな。
周りに合わせて拍手をしながら、目だけ動かして右に座る先生を盗み見た。
あたしと違ってドキドキしてない、落ち着いた表情。真剣とも言えるし、楽しげでもあるかな? 暗くてよくわからない。
パラパラとやんでいく拍手にあたしも手を止めて、脚の上で両手を組んだ。
やっぱり説明などは、ないらしい。
オーケストラの人たちが椅子に座ると、ヴァイオリンを持った女性が袖から出てきた。
……あれ、って……。
「宮本のお母さん、ファーストヴァイオリンの首席奏者だね」
目を凝らしていたあたしに向かって、ポソッと先生がつぶやく。見ると、先生は微笑んで再びステージに視線を戻した。
……ヴァイオリンの首席奏者って、たしか女の人はコンサートミストレスって呼ばれるんだっけ?
晴のお母さんってすごいんだな。