世界を敵にまわしても
……すごい。
今まで忘れてたみたいに、あたしは数回瞬きをくり返し拍手を送る。
音が響くホールによく合う、重厚感溢れる曲だった。
序曲とピアノ狂騒曲の演奏のあいだには、ピアノのセッティングがあるみたいで、少し時間があく。そのせいか、周りのお客さんが小さな声で各々の感想を話していた。
素人のあたしでさえ、オーケストラの一体感が見事だと感じたんだから、先生はどうなんだろう。
「す、凄かったね……」
先程からそれしか頭に浮かばないあたしは、隣の先生に話し掛ける。
「フッ……!」
唇をキュッと締めて鼻で笑った先生は、興奮気味のあたしが可笑しいらしい。
「そうだね……だいぶ、練習したんじゃないかな……」
笑い声を我慢するかのように、手で口元を抑えながら言う先生を失礼な人だなと思う。
本当に感動したんだから、しょうがないじゃん!
「どうせあたしは、クラシック初心者ですよ」
少しムスッとして言うと、先生は「怒らないで?」と小首を傾げながら微笑んだ。
「美月が楽しそうで、嬉しかったんだよ」
「……別に、クラシック嫌いなわけじゃないんですけど」
「まぁ俺は、美月が笑ってくれれば何でもいいけどね」
我慢していた熱が顔に集まりそうになって、あわてて先生の視界から逃げる。きっと先生はそんなあたしを見て、楽しんでるんだろうけど。