世界を敵にまわしても


凄いとか、頭がいいとか、羨ましいって言葉じゃなくて。


あたしはずっと、よく頑張ったなって言われたかった。


どんな結果でも、望まない結果でも。


受験に失敗し続けたあたしでも。


たった一言、頑張ったなって言われたかった。言ってほしかった。


それだけでまた、頑張れるから。


今までのあたしを、認めてもらえる気がしたから。



「……なんか、俺が泣かしたみたいだなぁ」


ハンカチに埋めていた顔をわずかに上げると、朝霧先生は浅く机に腰掛けて窓の外を見ていた。


あの日も聞こえた野球部のバッティング音が、静かな部屋に響く。


朝霧先生は顔半分隠したままのあたしの視線に気付くと、細めた柔和な眼を向けてきた。


「……」


何の言葉もないただの微笑みは優しくて、あたしの胸もあの日のようにむずがゆくなる。


……まさか朝霧先生に言われるなんて。


でも、多分きっと、あたしは心のどこかで言ってくれるんじゃないかと思ってたかもしれない。


自分でもよく分からないけど、何となく。


そんなこと絶対、口が裂けても言わないけど。


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