1ページの沈黙



波多野があたしになびかない理由。



みんな、それを知っている。



チカも、ヤナギくんも、あたしも。


でも、知ってるからってどうにもならない。





ハタノは、あたしになびかない。







それは、あたしのお姉ちゃんが好きだから。








"理央"




3年前のあの日まで、波多野がそう呼ぶたびに、あたしの胸はずきりと傷んだ。




理央に向けて微笑む波多野も。

理央の手を引く波多野も。

理央に躊躇いなく触れる波多野も。



全部全部、あたしは嫌いだった。




嫌いで嫌いでしょうがないのに、あたしは波多野が欲しかった。




だから、理央も嫌いだった。





あの頃。






まだ、理央が生きていた頃。




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