CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=
 



「ママさんは、もう芸能界には未練は無いの?」


『うん。あの事故の後、リハビリしてキズも痕が残らなかったので、芸能界で頑張っていたんだけど、パパと一緒の時間がなかなか無くて、一度は別れそうになっちゃったそうなのよ!

ママも真剣にパパと交際していたけど、芸能界って噂が独り歩きするから、変な情報が二人を引き裂きそうになって、ママは妊娠した時に引退を決意したって言ってた。』


「芸能界って何処の国でもおんなじなんだね~!

それから日本にきたナナちゃんは、日本語を覚えるのは大変じゃ無かったの?」


『すぐに覚えたよ。

TVのお陰だね。毎日何時間もTV観ていたから。

それに、フィリピンに住んでいる時にパパから教わっていたから、殆ど問題無かったよ。』


「ヘェ~!そうなんだ。

フィリピン語も喋れるんだよねぇ!

昨日ママさんと話している時にフィリピン語使っていたでしょ。」


『今でも家でママと話をする時には使ってるんだよ。


フィリピン語はタガログ語って言うの。

ママがね、日本に長く住んでいると忘れてしまうからタガログ語も使ってって言うの。』


「おいらにも教えて欲しいよ~ん!」


『良いよ。なんでも聞いて!』


「ありがとうって何て言うの?」


『Salamat.って言うんだけど、タガログ語では、丁寧語は語尾にpoを付けるから、有り難うございますだと、Salamat po.って言うのよ。』


「poは便利だねぇ。」


『そうなのよ。日本語は色々覚えないといけないけど、タガログ語だったらpoだけつけたら、大体丁寧語になるもんねぇ。

ちなみに、
どういたしましては、Walang anuman.って言うのよ。』


「ほかには!?」


『そうねぇ………例えば、
私は、あなたを○○です。
って言うのは、
○○kita.って言うのよ。
私は、あなたを好きです。って言うのなら、好きはgustoだから、Gusto kita.って具合ね!』


「簡単そうだなぁ。」

『そうでも無いのよ。文法がややこしくて、私も良く間違うもん。特に、過去、現在、未来によって英語と一緒で動詞や形容動詞が変化するし、アルファベットのLとRを良く間違えちゃうんだ。』


「丸暗記しかないのかぁ。」

『まぁ、それに近いかも。』

「よっしゃ、覚えたるよ~ん!」
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