CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=

6.Past's Secret

 



「まさか、君がテジュンのお袋さんとは思わなかったよ、愛美(エミ)。」


『お久しぶりって言うか、よくも私を捨てて、英美(ヨンミ)と結婚したわね!

あの日、あの子が明洞(ミョンドン)で迷子になって、アナタと出会わなければ、私と結婚してたかしら?』


「それは、ちょっと分からないけど、あの日ヨンミちゃんと出会った瞬間に運命を感じてしまったんだ。

インスピレーションって言うか、何て言うか、あの時

《俺は、この女性と結婚する》

って、確信したんだ。」


『何を勝手な事言ってるのよ!?

あの後、突然

《別れてくれ!》

って言ってきて、私がどんなに傷付いたか知らないでしょ!?

死のうとして、走って来る車に飛び込んだんだから!』


「エ~ッ!

車に……。」


『そうよ!

アナタに突然捨てられて、《運命の人に出会ったから!》って、意味分かんないし、悔しいし、だから東大門(トンデムン)市場の前を走って来る車に飛び込んだのよ。

死んで、アナタの事を恨んでやろうと思ってね!』


「でも、愛美(エミ)は生きている。

そんなヘタな嘘をつくなよ。」


『嘘じゃないわ。

あの時、飛び込んだ車を運転していたのが、テジュンの父親、今の私のだんなよ。

あの人は、その時ちょうど韓国に仕入れに来てたの。

私は、その彼の車に飛び込んだの……。

でも、彼の運転が巧くて、私はかすり傷だけで済んだのよ。

その後、彼は私の事情を知り、滞在中は良く連絡をくれる様になったわ!

優しい彼のおかげで、アナタへの憎しみから解き放された私の心は、次第に彼へと傾いて行って、そして愛し合うようになったわ。』


「そうだったんだ。

しかし、元々俺と愛美(エミ)って、友達以上の関係では合ったけど…あの頃の俺は、そういった関係の女性が何人か居たからなぁ……。」


『エ~ッ!そうなの?

私ってセフレの一人にすぎなかったって事?』


「あぁ、済まない。

あの当時、俺は調子に乗りすぎていたんだ。

ヨンミちゃんと知り合って目が覚めたんだ。

酷い事をして済まなかった。

君の心を分かってあげられ無かった。」


『もうあれから22年が経ったから、許してあげるわ。

しかし、驚いたわよ。

うちの娘と付き合ってるのがアナタの息子とはね!』




 
< 179 / 300 >

この作品をシェア

pagetop