CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=
 



ハードロックのFraction of memoryは、ドラムの見せ場だから、ケントしっかり叩けよ!


と応援しながら、俺のギターも、ディストーションガンガンでリズムにメロディーを重ねて行った。


KYUがサビの部分でシャウトしているのを聴いて、ハッとした。


昨日までのKYUと、明らかに違う迫力だから。


プロの歌手としてもうすぐ一年が来るが、目覚ましい成長ぶりに、俺も奮い立ったぜ。


この曲は、TAKE8で西条店長からOKが出た。


本堂店長よりも早いタイミングでOKをだしたのが気に入らなかった本堂店長は、苦虫を噛み潰したような顔をして、


『よし、次は

For your love

バラードはKYUの大好きなジャンルだから、思いっきり歌ってくれよ。

チャンス、ギターをもっと泣かせろよ!

ベース、もっとドラムの音聞いて!

森本君、この曲もキーボードじゃなくて、グランドピアノでやってみてくれるかい!?』


「は~い!分かりました。」


『じゃあ、いきます。

1、2、3、4~♪』


まるでジャズでも聴いているかの様な錯覚に陥って仕舞いそうになるKYUの歌声!


キーボードからピアノに変わっただけで雰囲気までガラッと変わって仕舞うくらい、ピアノとKYUの歌声は相性が良い。


『ストップ、ストップ!』


今日、何度目かのストップが、今度は西条店長から!


「森本君、左手で入れている伴奏を、章節の頭の部分をもっと強めにタッチして、もう一度頭からよろしく!」


『ジャズっぽくなっちゃいますけど、良いんですか!?』


「良いよ!

とにかく、それでやって聴かせてくれ!」


『じゃあ、いきます。
1、2、3、4~♪』


西条店長も、元々キーボード奏者だったから、何か感じるものがあったんだろう。

以前は、バーでグランドピアノを弾いて生活していたらしいし…。


本堂店長から、キーボードからピアノに変わらさせられて、演奏方法を西条店長に指導されたジョージのピアノ。


聴いていてビックリの曲が奏でられ、それに併せてKYUの歌声が更に、爆発したように俺の耳に染み込んで来た。


「KYU、凄いよ!

まるで別人の様に上手くなってるよ。」


『チャンス、上達したのは、演奏者だけじゃ無いんだぜ。

KYUだって進化してるんだよ。』
< 247 / 300 >

この作品をシェア

pagetop