CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=
 



電話を切って、壁掛けの時計を見たら、8時を少し回ったところだった。


俺は、シャワーを浴びて、ジーパンとTシャツに着替え、薄手のジャケットを羽織って、駅前通りに在る旅行代理店へ向かった。


いつもチケット予約を頼む、アジアツーリストに入ると、顔馴染みの営業マンが近づいて来た。


『高山様、お久し振りです。』


「どうも、仁科さん。

ご無沙汰してます。」


『また韓国へ行かれるのですか?』


「ハイ。

今回、ちょっと急で悪いんだけど、

成田⇔仁川(インチョン)

のチケット、明日出発で取れますか?」


『明日ですか?

それはまた急ですね!

少々お待ち下さいね。

調べてみますから。』


と言いながら、カタカタとキーボードを叩きながら、端末を操作して、ディスプレイに表示されている予約状況を確認している。


『高山様、明日出発だと、ゴールデンウィークを過ぎてるとはいえ、ちょっと難しいですね!

関空からの出発でしたら、ビジネスクラスに多少の空きは有るんですが…。』


「関空ですか…。」


と、つぶやき暫く考えていたら、


『ちょっと待って下さい。

ファーストクラスでしたら、明日の昼の

12:55発、15:35着

で、KE 702の大韓航空、韓国仁川空港行きが1席、空きが出ましたけど…。』


「それで結構です。

それでお願いします。

6月4日出発、7日帰国で取れますか?」


『大丈夫だと思いますが、少々お待ち下さい。』


再び、カタカタとキーボードを叩いて、予約をしている。


3分後……、


『大丈夫でした。

1年間有効で、帰国日程の変更も可能ですので。

こちらが航空券に成ります。

Koh Chang-Suh様で予約をしておきましたので、後は、再入国の許可証を入国管理局で取っておいて下さいね。』


「いつも、無理ばかり頼んですみません。

おいくらですか?」


『ファーストクラスですが、格安の195,800円に成ります。』


「それじゃあ、これで。」


と言って、カードを出した。


『それでは、お預かり致します。』


と言って、俺のクレジットカードを受け取り、カードリーダーにサーッと通して


『カードをお返し致します。

もう暫くお待ち下さい。』


そして30秒後に……




 
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