CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=
今から2年前、 




高校3年の冬、T大学教育学部のセンター試験も楽々こなして、後は卒業を待つだけ。



と言う訳で、俺は一人で韓国のハラボジ(お祖父さん)のところに遊びに行こうと決めた。


って言うのも、最近日本には沢山の韓国人アーティストがやって来たり、日本デビューしたりするのが増えてきている。


彼等はかなりのレベルだ。


だから、一度本場韓国の音楽を聴きに行くわけだ。


向こうに行けば、今はアボジ(親父)もいるから、音楽番組の収録現場にも入れて、生の演奏や歌が聴けるって訳だ。



アボジも、喜んでOKしてくれたし。


ひょっとしたら、有名人と話せるかも!


と言う訳で、1月半ば過ぎから1ヶ月、ソウルでの生活が始まる。


今から楽しみだ~!

まぁ、帰って来たらすぐに入試だから、ちゃんと勉強もやるんだけどね!


仁川(インチョン)空港からバスに乗ってソウル市内へ。


松坡区蚕室洞(ソンパグ・チャムシルドン)の中心部まで来てバスを降り、ロッテワールドホテルを右手に見ながら少し歩いたところにアボジ(親父)の会社がある。

新星MUSIC

アボジが設立した音楽事務所だ。

新人アーティスト育成や、ライブイベント、独自のスタジオ経営に楽曲提供、はたまたカラオケボックスの音楽配信、インターネットでのPV配信など、音楽に関する事は、ほとんど手掛けている。


その5階建ての自社ビルの入り口には、ガードマンが両サイドにいる。

俺はハングル語で、
「高 長寿ですが、アボジ居ますか?息子が日本から会いに来たと伝えて下さい。」

と言うと、ガードマンは予めアボジから聞いていたらしく、俺の顔を見て、にっこりと笑い、すぐに通してくれた。

ついでに、5階の社長室にいると教えてくれた。

正面玄関から真っ直ぐ突き当たりに在る受付で通行証を受け取り、セキュリティゲート奥のエレベーターに乗り込み、5階のボタンを押す。

静かに上昇したエレベーターは、すぐに着いて扉が開いた。
エレベーターを降りたところには、広いエントランスがあり、その奧に、社長専用の秘書が受付カウンターの中で座っていた。

俺の顔を見て、すぐに微笑み、インターホーンのボタンを押して、

『社長、息子さんが参られました。』

と言うと、


『すぐに通して。』
と言うアボジ(親父)の声が聞こえきた。

…………




 
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