自由のギフト

ロシアンブルー

ミャァ~ ミャァ~
猫撫で声。
ベランダから聞こえてくる鳴き声。
静かに優しく甘えるように鳴く、けれど自分がココにいる事はちゃぁんとわかるように鳴く。
ミャァ~ ミャァ~

「タチカ、また来てるよ猫ちゃん。」
この小さな少女はすっかり僕を呼び捨てにする事が当たり前になっている。
僕も近頃、ちゃん付けする事が少なくなってきたけど。
お互い、二人の生活が普通になってきた。
これが年頃の男女のならばと妄想するのを止めて、親子程歳の離れたノカと猫ちゃんの確認をしに窓に近寄る。

ミャァ~ ミャァ~

「ホントだ、すっかり懐いちゃったじゃん、ノカが餌あげたりするからだよ。」
「だってお腹すいたって言ってるみたいだったんだもん。」
「今日は開けちゃダメだからね。」
「え~かわいそう。」
あからさまにふて腐れ、磨りガラスの向こうを覗こうと窓に顔をくっつける。
そんな事しても見えないのに、それが必死のアピールのようだった。
ここ数日、僕の部屋のベランダに淡い灰色をしたスリムな猫がやって来る。
首輪がしてあるので飼われていると思うのだが気がつくとベランダにきて鳴いている。
初めに少し朝食を分けたのがいけなかったのか、毎日訪問してくるので、さすがにあまり良くない気がして今日はノカに遊ぶのを止めてもらおうと思った。
「そんな事しても開けちゃダメだからね。」僕は少し意地悪くそう言うと部屋の掃除に取り掛かった。
ホントならベランダの窓も開けたいとこだが、玄関のドアと台所の窓で我慢する。
程無くして猫は立ち去ったようでノカが「あ~あいっちゃった」と大きな独り言を言っていた。
「はい、はい、そこどいて掃除機かけるよ。」
猫の居なくなったベランダの窓を開け、手際良く掃除機をかける。
ん?
掃除機の音に交じり先程の声が聞こえたような・・・。
やっぱり聞こえる、僕は掃除機をオフにして聞き耳をたてる。
ベランダがわに意識を高める。
まさかノカが猫と遊びたいばかりに僕を嵌めたって事か?
いやいや、声はするけど姿が見えない。
「ノカぁ、猫ちゃんの声が聞こえるんだけど。」
僕は掃除機を置いて、ベランダにでて聞き耳をたてる。
続いてノカも顔だけだして耳をすました。


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