三つの月の姫君
 とんとん、とノックしてから真鍮のノブに触れてみる。


 冷たかった。


 思わずハンカチを出して当ててみる。


 ぐ、とドアノブを握ったとき、きゃあ、という若い女の声を聞いたような、そこに立ち入ってはならないもののような、奇妙な気もした。

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