三つの月の姫君
「うし! 男前!」
 

 と、言っても、元からか、この城には鏡がない。


(確か鏡に映らない化け物の話、有名だよな)


 確かに思う。


 あまり影が映るようなものはない。


 彼は自分がタイムスリップしたようだ、と改めてじわじわと胸を押される感覚がし、吐き気までしてきた。


 そして自分の立ち位置といえば、ミスターの入浴を面倒みている。


(なんなんだ、この倒錯的な図は)


 生白く、生気を感じさせない肌が温められて香りと共に腕を、肩を色づかせていく。


 そのつま先を洗いながら、くらっときた。





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