ヤンデレな人たち
1話 ヤンデレラ
   第一話 ヤンデレラ



「このガラスのブーツをはいた男はおらぬのか!」
 


 とある王国の中では、大騒ぎが起きていた。



 その原因は昨晩、王城で行われた舞踏会での一幕だ。そこで王国の王女はとある男性に恋をした。とても風雅な踊りですぐに一面惚れとなってしまったが、彼は十二時の鐘が鳴ったと知るや否やすぐにその場を後にした。



 王女はすぐに後を追ったが、近くにあったガラスのブーツを残して姿を消してしまった。そしてもうこのブーツの主を探して一週間が経とうとしていた。



「ああ……。あなたは今どこにいるのですか?私の心を掴んで離さない、罪な方……」



 王女は毎日、ブーツの主を思ってずっと窓から街を見ていた。ブーツは日中、使いの者が持っていくが、夜には戻ってくるのでこの持ち主のぬくもりを感じながら夜を過ごす。



 貴族連中であれば見知った顔が多いが、彼女は初めて見た顔だった。だから、ブーツの主は街から来た人間なのだ。



 居ても立ってもいられず、ついに王女は勅命扱いでその日に王城にいた者、舞踏会に参加した者を全員王城に集めるよう使いに命令した。そして翌日、参加していた全員が集結した。



 そして一人ずつそのブーツに足を入れていく。小さかったり大きかった時点で次の人間が履く。それを繰り返していく。



 男たちは決まって足を入れる前に一つ祈った。もしぴったりはまれば王女と親密な関係になれる。貴族を通り越して王族の仲間入りになれるのだ。富も名誉も好きなだけ得ることが出来るのだ。



 そしてピッタリはまった人間がついに現れた。見た目は市民の中でもかなり下に位置しているような貧相な服を着た人間――しかも王女とそう年は変わらない少年だ。



「ようやくお会いできました。ガラスのブーツの主を私は全力で探していました。そうですか、あなたですか。ふふっ」
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