ヤンデレな人たち
 少しだけ含みのある笑みを浮かべる王女。そして、



「この男を私の部屋に連行しなさい!」



 兵士がすぐに少年の周りを囲んだ。少年は何が何だか分からずただ右往左往している。そして兵士たちに連行されてしまった。





 王女の部屋に移され、着替えさせられた少年は何が何だか分からない。ただ自分は、一度でいいから舞踏会に参加したかっただけなのだ。それがどうしてこうなってしまったのか。



 大きな扉が開く音がした。そこから出て来たのは王女であった。とても嬉しそうににこにこしている。



「舞踏会からあなたを見つけるまで一週間。このブーツの持ち主を思わなかった日なんて一日もありませんでした。そしてようやくあなたというブーツの持ち主が見つかった。あなたとの舞踏とても素晴らしかった。だからぜひもう一度、私と踊って」



 それでどうにかなるものであればお安い御用だ。一時間か二時間、それくらいで解放されるのなら逆に良い思い出にもなるだろう。



 少年は頷いて王女の手を握った。そして同じように彼女も手を握った。



 ガチャン。



 ――えっ?



 金属音がして少年は首をかしげた。そして手を見て驚いた。



 両手には手錠。自分の手首と彼女の手首にそれがされている。両手首にされてしまい、二人はほとんど密着している状態になってしまった。



「あの時は十二時までだったけど、これならあなたと私二人でずっと踊れるわね」



 そして手錠を外すための二つのカギは手に持って窓から投げ捨てる。そしてトポンと小さい音を立てて池に小さい波紋を作った。自分にとって命の次に大切なカギが小さい音と波紋とはどこまでも皮肉なものなのか。



「あなたにはもう二度と十二時の訪れはやってこない。もう十二時までだなんて嫌。ずっと踊っていましょ。食事の時も寝る時も入浴のときだってあなたと一緒……。あは、あははは!」



 彼女笑い声がこだました。終わることのない舞踏が始まった。

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