ヤンデレな人たち
 父親からもらったお金で二人はテーブルに向き合うように座ってコーヒーをすすっていた。



「それで、私と……」



「それよりもまず、キミの素性が知りたい。キミだけ知ってるのは不公平だろう?」



「そ、そうですよね……」



 そう言って彼女は自分の名前と出身家を言った。やはり貴族だったようだ。



「そうかやっぱりキミも貴族だったのか。悪いけど、僕は貴族の婿にはならない。僕は父さんの家業を継ぐ」



「そ、それでしたら私が嫁になります!あなたの家に嫁ぐ覚悟もあります!」



 彼女のその言葉を聞いてかなり心が揺れた。自分の今の恵まれた生活を捨ててまで自分の下に来てくれるなら。と。



 しかし、青年はすぐに首を振った。仮に嫁に行くと言っても、相手は貴族。取り返さんと営業が出来なくなるほどの妨害をされては困る。



「で、でも駄目だ!僕は貴族の子となんて!」



 そこで頭がぐらぐらしてきた。とても平静を保っていられない。すぐに床に倒れてしまう。



「あらあら?どうしたのですか?」



 声は笑っている。しかし、彼女の顔が全く分からない。それだけ世界が歪んでいる。
「あなたほど強情な方は初めてですわ。ちょっとの間お休み」


< 12 / 13 >

この作品をシェア

pagetop